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キャリアコンサルタントの資格は役に立たない?資格の更新をしなかった理由

私は2019年にキャリアコンサルタントの試験に学科・実技ともに合格しキャリアコンサルタント協会の名簿に登録されましたが、資格取得5年目の更新をしませんでした。

結果的に「役に立たない資格」にしてしまったのです。

キャリアコンサルタントの資格を「役に立つもの」にするには土台が必要だということを強く実感しました。

「国家資格だから勉強すれば、知識・スキルがついて転職時の評価アップや収入アップに繋がるだろう。」と意気込んで勢いだけで資格を取得すると、私と同じように「役に立たない資格」になりかねません。

現在、講座の受講を検討されている方、役割や実情に興味がある方はこの記事を読んでキャリアコンサルタントへの理解を深めていただけると幸いです。

キャリアコンサルタントとは?

厚生労働省 職業情報提供サイト(日本版O-NET)では、キャリアコンサルタントは以下のように定義されています。

相談者の職業の選択、職業生活の設計、職業能力の開発・向上に関する相談に応じ、助言及び指導を行い、相談者がより良い人生を送り、自分が望む生き方を実現できるよう、専門家として支援する。キャリアコンサルタント試験等に合格し名簿に登録した者は、キャリアコンサルタントと称することができる。

厚生労働省 職業情報提供サイト(日本版O-NET)
筆者
筆者

要約すると「キャリアコンサルタントとは、相談者の職業選択や能力開発を支援し、より良い人生を送るための助言や指導を行う専門家」です。

資格を取得できた人だけが、「キャリアコンサルタント」を名乗れる名称独占資格であることもよく知られています。

資格講座の学習領域として取り扱われるのは、大きく分けると以下の通りです。

  • 「カウンセリング理論と技法」
  • 「労働関連の法律や制度」
  • 「労働市場の知識」
  • 「メンタルヘルスの知識」
  • 「キャリア教育の知識」

キャリアコンサルタントが役に立たないと言われる理由7選

SNSなどでも批評されていますが、カウンセリングという対人スキル、法律や市場の知識などを幅広く学習したはずのキャリアコンサルタントがなぜ役に立たない資格とされてしまうのでしょうか?

キャリアコンサルタントの資格をもってなくても実務はできる

キャリアコンサルタントは国家資格ではありますが、「名称独占資格」です。

「キャリアコンサルタント」と名乗るのには資格が必要ですが、実務を行う上では資格は必須ではありません。「キャリアアドバイザー」などの呼称で同じ業務をしても問題ありません。

医師や社労士のように資格を保有していないと業務ができない「業務独占資格」ではありませんので、キャリアコンサルタント資格は国家資格として存在意義が薄いとされています。

日本では「カウンセリング」に対するイメージが良くない

欧米のドラマや映画では、何か事件の後に「カウンセリングを受けろ。」というセリフがあるシーンを見たことはないでしょうか。これはカウンセリングを受けることが「普通のこと」として根付いているからです。

日本ではそうではありません。「カウンセリングを受ける」=「何か悪いことをした」ようなイメージがあります。そのため、カウンセリングを受けようと最初の一歩を踏み出す人が少ないのです。

めったにない相談希望に対してコストを割いてまでキャリアコンサルタントを用意しておく必要はないのでは?と疑問視され、需要は低いままとなっています。

資格取得と資格維持のコスパが悪い

資格の取得には講座が学科対策はもちろん実技対策もできるので、講座の受講が一般的とされています。

スクールで講座を受けることを考えると資格取得までに必要なコストは合計で約30万円~約49万円が資格取得までにかかります。

資格取得までの各費用相場
  • 養成講習の受講料相場:約25万円~約44万円程度。
  • 国家試験の受験料:学科試験が8,900円・実技試験が29,900円
  • 資格登録料:登録免許税9,000円・登録手数料8,000円

さらには、資格の更新が5年に1回あります。更新は認可の更新講座を受け、知識やカウンセリング技術をアップデートする必要があります。

更新コストは、1回あたり約10万円~約13万円かかります。

資格更新の各費用相場
  • 1講習:約1.5万円~約2万円×6回で約9万円~約12万円
    (知識講習1回、技能講習5回で計6回の講習)
  • 更新手数料:8,000円

教育訓練給付金の対象ですので、資格取得のコストは下げることはできますが、それでも需要に対してコストが見合ってないという意見も多く見受けられます。

得られるスキル・知識が浅く広い

学習領域が広いことで、得られる知識は浅く広くになってしまい各領域の専門家に太刀打ちはできません。

キャリアコンサルタントでは解決しきれない問題はカウンセリング後に各専門家に相談者を紹介する橋渡し的な役割になることが求められます。

「最初から各分野の専門家に相談した方が早いのでは?」と考える人も多いでしょう。

資格保有が転職での必須条件・評価アップ項目にはならない

キャリアコンサルタントの資格保有が応募条件の必須要項になっているような求人はほぼありません。

歓迎の項目には記載されることはよくありますが、より重視されるのはその業界での経験です。

私自身が転職活動していたときに実際に言われたのが、

「勉強に対しては頑張れるのはわかったが、キャリアコンサルタントの資格はさして重要ではない、業界未経験だと採用はかなり難しい。」

資格取得だけで収入アップや独立を目指すのは難しい

転職ではあまり重要視されていないように思えますが、収入アップや独立についてはどうでしょうか?

労働政策研究・研修機構(JILPT)のキャリアコンサルタントの実態調査の内容が公開されています。

出典:労働政策研究報告書No.227本文『第2回キャリアコンサルタント登録者の活動状況等に関する調査』|労働政策研究・研修機構(JILPT)

キャリアコンサルタントの資格保有者の個人年収の分布図を見ると、一般的な収入分布図より若干高い結果が出ています。

しかし、調査書内では「正規雇用・非正規雇用にかかわらず、大企業で働いている割合が高いため」と推測され、「全体の給与の分布と今回調査の給与の分布はおおむね類似している」と結論付けられています。

つまり、資格の取得自体が収入アップにつながっていないとの見解が示されています。

出典:労働政策研究報告書No.227本文『第2回キャリアコンサルタント登録者の活動状況等に関する調査』|労働政策研究・研修機構(JILPT)

就業状況の分布図を見ると、

  • 「正規雇用」51.9%+「非正規雇用」26.9%=78.8%
  • 「キャリアコンサルタントとしてフリーランス・個人事業主」=7.2%

大半のキャリアコンサルタントが、「企業内キャリアコンサルタント」として活動しており、資格取得をきっかけに独立を果たした人はかなり少数派ということが推測できます。

企業内キャリアコンサルタントのしがらみ

キャリアコンサルタントの78.8%は「企業内キャリアコンサルタント」として活動しています。

では、ここで同じ企業内の社員が相談者となった場合を想像してみましょう。

相談者の状況や内容によっては、所属企業に不利な面談結果となる可能性があります。

例として挙げるなら、優秀な人材の相談者が「退職して新しい環境で再出発したい」という内なる望みを持っていた場合です。

雇われている立場上、忖度してしまい「優秀な人材に退職という道」を気づかせたり、後押ししたりすることを避けてしまうというケースは想像に難くないでしょう。

つまり、企業内キャリアコンサルタントは雇用主やクライアントに対し、しがらみがあることで理想的な面談や支援ができないのではないかという意見もあります。

キャリアコンサルタント資格取得のメリット3選

キャリアコンサルタントの資格取得にはもちろんメリットもあります。実際に私が実感したことを3つご紹介します。

広い知識で多角的な視点が得られる。

浅く広い学習領域で問題を解決しきれない部分があると指摘しましたが、今までの自分がやってきた領域外のことを勉強するきっかけとも言えます。

経験・勉強してこなかった分野は新しい視点を与えてくれますので、仕事プライベート両方に活かせるでしょう。

カウンセリングスキルで仕事・プライベートを楽しくできるかも

カウンセリングの実技試験もありますので、理論や技法の勉強と実技演習も必要です。

特にカウンセリング技法はプライベートでも活用することができます。特に初対面の人だとわかりやすいのですが、話の広がり方が技法を使うと使わないでは大きく変わってきます。

私は立ち飲み屋で初対面の人に使ってみましたが、話が盛り上がった末に終電を逃しました。

すでに関連する領域で仕事をしている人にはスキルアップにつながる

人事部や人材派遣のキャリアアドバイザーなど面談も多く、相談される事の多い業務に従事している人はスキルアップに直結します。

カウンセリングの技術を使えば、コミュニケーションが円滑になり、話の展開もしやすくなるでしょう。

同時に面談者にキャリアコンサルタントであることを名乗れるので、信頼感や安心感を与えやすくなることもメリットの1つです。

キャリアコンサルタント資格がおすすめな人

私は実体験から「役に立つ資格」にするには予めの土台や目標が必要だったと痛感しています。

同じ講座を受けた同窓の人達の中には、今もキャリアコンサルタントとして活動されている人は何人もいます。教育現場の人だったり、別業種の講師として活躍されていたり、社労士の勉強を同時進行で頑張っている人もいました。

一例ではありますが、キャリアコンサルタントと相性の良い資格や仕事・専門知識を挙げてみます。

これらをすでに保有していたり、従事している、目標としている人はキャリコンサルタントの資格を「役に立つ資格」として活かしやすいでしょう。

関連性のある資格
  • 産業カウンセラー
  • メンタルヘルス・マネジメント検定
  • 社会保険労務士(社労士)
  • コーチング資格(ICF認定コーチなど)
  • ファイナンシャルプランナー(FP)
キャリアコンサルタント資格を活かせる仕事
  • 人材開発や研修企画
  • ハローワークや自治体のキャリア支援
  • 大学や専門学校のキャリアセンター職員
キャリアコンサルタントを補完する専門知識
  • ITスキルやDX関連知識
  • 英語や多言語スキル
  • 心理学やストレスケアの知識

キャリアコンサルタントは汎用性の高い資格が故に、専門性や経験が無いとどっちつかずになってしまう資格だと言えるでしょう。自分の興味や得意分野を掛け合わせることで活躍の場が大きく広がります。

キャリアコンサルタント資格の更新をしなかった理由

正直なところ、私は資格を取得してからキャリアコンサルタントとしての活動はありませんでした。

役に立ったいえば、取引先の採用担当者が産業カウンセラー保有者でキャリアコンサルタントの領域も知っていたためにスカウトされたときくらいです。

資格を更新する前に判断基準としたのは、

  • 資格合格してから更新までの間に役に立ったかどうか
  • 更新費用に見合う資格だったかどうか
  • 学習してきた内容に面白みを感じれたかどうか

学習内容については心理学やカウンセリング理論や技法については面白く勉強すること自体は苦ではありませんでした。

他の2点については、皆無でした。これで更新するのは時間と費用を浪費するだけだと思い、更新しないことに決めました。自分のキャリアを見定めてなかったことに反省しています。

キャリアコンサルタントが「役に立たない資格」と言われる理由を反面教師にして、自分のキャリアをじっくり見定めてから資格取得を検討するようにしましょう。

最後までお読みいただきありがとうございました。この記事がキャリアコンサルタント資格取得を考えている方の一助になれば幸いです。

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